慢性腰痛は、腰だけの問題ではなく、神経や生活習慣などさまざまな要因が関わります。このページでは、慢性腰痛が長引く理由や、鍼灸ルームあかりの考え方、鍼灸でできることをご紹介します。
慢性腰痛の悪循環を断ち切り、軽やかな毎日へ

一人ひとりの状態に合わせた鍼灸治療とセルフケアで、つらい腰痛の悪循環を断ち切り、軽やかな毎日を目指します。
慢性腰痛とは
腰が痛いのはつらいものです。長く続いたり、良くなったと思った後に繰り返したりすると、日常生活への影響も大きくなっていきます。
腰痛は、痛み始めてからの期間によって、次のように分けられます。
- 発症から4週間未満…急性腰痛
- 4週間から3ヶ月未満…亜急性腰痛
- 3ヶ月以上…慢性腰痛
新しく始まった腰痛の多くは、最初の数週間で痛みや日常生活への支障が大きく軽減します。発症から6週間ほどで、痛みや生活への影響が、痛み出した頃のおよそ3分の1まで改善する傾向が報告されています。
検査をしても原因を一つに特定できない腰痛の経過をまとめた研究では、最初の3ヶ月までに回復した人は約3割で、1年後にも約6割の人が何らかの腰痛を感じていたと報告されています。ここには、強い痛みが続いている人だけでなく、軽い痛みが残っている人や、痛みを繰り返している人も含まれます。
腰痛が長く続くようになると、筋肉や関節、椎間板などの腰の状態だけでは痛みを説明しきれなくなることがあります。
では、なぜ一部の腰痛は長引いてしまうのでしょうか。次の項目でもう少し詳しく見ていきます。
なぜ腰痛が長引くのでしょうか
腰だけが原因とは限りません
腰痛が長引く理由は、さまざまな要因が絡み合っていて一筋縄ではいきません。現在では、「生物・心理・社会モデル」という考え方が世界的な標準になっています。

生物学的要因
身体の組織が治った後も、神経系が痛みに敏感な状態のままになり、脳が痛みを感じやすくなってしまうことがあります。そのため、小さな刺激でも強い痛みと感じやすくなってしまいます。
また、運動不足や長時間同じ姿勢を続ける生活、筋肉の緊張、関節の動きの低下、筋力・体力の低下なども、腰痛が長引く要因になります。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの神経圧迫が背景にある場合もあります。
心理的要因
「動かすと悪化する」という不安や恐怖から体を動かさなくなり、さらに痛みが続きやすくなることがあります。仕事や家庭のストレスや不安感が痛みの感じ方を強め、脳の痛みの抑制回路を弱めて回復を妨げることがあります。
社会的要因
仕事や家事の負担、睡眠不足、人間関係や生活環境なども、慢性腰痛に影響します。
実際に、デスクワークや細かい作業、手先を使った趣味などに集中してしまい、長時間同じ姿勢を続けてしまい、筋肉がこり固まり血流が悪くなってしまう方のお話もよくお聞きします。
痛みが続くと「痛みの負のスパイラル」ができる
痛みが続くと痛みに対する感受性が高くなり、以前には感じなかったような程度の痛みでも敏感に感じたりするようになっていきます。
長期に渡る痛みは辛いですから、どうしても痛みに注意を向けすぎたり、治らないと思い込んだり、ネット検索で脅迫的な情報に触れすぎたりして、気持ちがネガティブな方向に向きがちで、ストレスにより体が常に緊張している状態になります。
そうした状況では痛みに対して悲観的・不安になり、さらに痛みに過敏になっていきます。
すると警戒心から身体全体や痛む場所を動かさなくなり、筋肉が衰えたり、うまく動かせないようになって、気分も落ち込んだりして、さらに痛みが強くなります。
このように「痛みの負のスパイラル」ができあがってしまいます。

ストレスや姿勢も負のスパイラルを強化する一端となります
ストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れ、全身が緊張して筋肉が硬くなります。その状態が続くと姿勢もくずれやすくなり、腰への負担が増えてしまいます。
猫背や反り腰などの姿勢が続くと、腰に偏った負担がかかり、腰痛を引き起こしやすくなります。また、デスクワークや立ち仕事など、日常生活の姿勢や動作も腰への負担に大きく関わっています。

現代医学ではどのような治療が行われるのでしょうか
まず、腫瘍や感染症、骨折などの重大な病気が隠れていないかを確認します。必要に応じて画像検査なども行われます。
そのうえで、原因を一つに特定できない慢性腰痛では、次のような治療が組み合わせて行われます。
- 運動療法(リハビリなど)
- 薬物療法(服薬や湿布など)
- 物理・装具療法(電気治療、温熱療法、コルセットなど)
- 必要に応じて、行っている病院では認知行動療法など
近年では、痛みの仕組みを正しく理解することも治療の一つとして重視されるようになっています。
慢性腰痛では、一つの治療だけですべてを改善するのではなく、その方に合った方法を組み合わせていくことが大切と考えられています。
当院でも、必要に応じて病院での治療と併用しながら施術を行っています。
鍼灸ルームあかりでは
当鍼灸院では、身体の緊張を和らげ、動きやすい身体づくりとセルフケアの組み合わせで、痛みの負のスパイラルから抜け出すためのきっかけ作りをします。
痛みへの不安や恐怖が和らぎ、少しずつ身体を動かしやすくなることで、日常生活の幅は広がっていきます。
痛みに振り回される時間が減り、ご自身のやりたいことに目を向けられる毎日。当院では、そのような状態を目指して施術を行います。
その方に合った施術を組み立てるために、初診の際には、まずは「どこが痛いのか」を詳しくお聞きします。
一口に腰と言っても、背中の下の方や、骨盤との境目、お尻の方、と人により指さされる場所はさまざまです。
さらに、
- 動き始めに痛いのか
- 起床時に痛いのか
- 前にかがむと痛いのか
- 反ると痛いのか
など、痛みがでる場面も確認します。
そのうえで実際に触って確認します。腰だけではなく、お腹の状態、腰と関わりの深い身体の部位(膝の裏やふくらはぎなど)も確認して、必要があれば治療に組み込んでいきます。
当院で一番大切にしているのは、腰だけを見るのではなく、身体全体を一つと捉え、その方が本来持っている回復しようとする力を引き出すことです。
身体全体が緊張していれば、腰も緊張していて当然です。腰を治療しただけでは足りません。
当院では身体全体への治療には、日本伝統医学の経絡治療を取り入れています。
脈やお腹の状態から、その方のウイークポイントを見極めて、全体のバランスを整え、腰痛治療の下地となる治療を行います。そうすることで、患者さんにとって負担が少ない施術が行えます。
また、日常生活でどんな時・どんなことをした後に痛みが出やすいのかお尋ねすると、長時間のデスクワークや立ち仕事、くつろぎタイムでおかしな姿勢をして寝てしまった、椅子や寝具が合っていない、などの生活背景が見えてくることがあります。
そこから、お一人おひとりに適した無理のない範囲のセルフケアの提案も可能です。
慢性腰痛は、一人ひとり原因や生活背景が異なります。そのため当院では「腰痛」という病名ではなく、「その方の腰痛」を診ることを大切にしています。
鍼灸でできること
鍼灸では、痛みを和らげるだけでなく、身体を動かしやすくし、セルフケアに取り組みやすい状態を目指します。
腰まわりへの鍼刺激は、血流を促し、筋肉の緊張を和らげることで、痛みの軽減につながります。

また、痛みが長く続くと神経が痛みに敏感になり、小さな刺激でも強く痛みを感じやすくなることがあります。
鍼刺激には、この過敏な状態を少しずつ落ち着かせ、身体が本来持っている「痛みを必要以上に気にしない力」を取り戻す手助けをすると考えられています。
さらに、自律神経のバランスが整うことで、身体全体の緊張が和らぎリラックスしやすくなると感じる方もいらっしゃいます。
施術後は、
- 身体が動かしやすくなった
- ご自身で難しかったセルフケアが行いやすくなった
- 緊張が和らぎ、身体が楽になった
といった変化を感じたとお話しいただくことがあります。つらさが和らぐためか、それまで言葉少なだった方が、自然とお話してくださるようになることも少なくありません。
鍼灸は、それだけですべてを改善するものではありませんが、痛みの悪循環を断ち切る「きっかけ」の選択肢の一つになり得ます。
そのきっかけを活かして無理のないセルフケアを続け、少しずつ身体を動かせるようになり、痛みに振り回される時間を減らしていくことを目指します。

当院ではこのような施術を行います
問診やお身体の状態を確認したうえで、その日のその方の状態に合わせて施術を組み立てます。
- 問診と、脈診・腹診・お身体への触診
- 全身のバランスを整えるための経絡治療
- 腰と腰に関係する筋肉や組織の緊張を和らげる鍼
- 必要に応じて、お灸・鍉鍼(皮膚に触れて刺激する刺さない鍼)・低周波鍼治療器を組み合わせます
- 身体の状態に合わせたセルフケアの提案
初回は問診を含め、ご来院からお帰りまで1時間半〜2時間程度をみて、前後のご予定に余裕を持ってお越しください。
強い刺激や、無理に響かせるような施術は基本的には行っていませんが、刺激の感じ方には個人差があります。
気になる場合には、鍼の太さや深さなどを調整しながら施術を進めますので、遠慮なくお知らせください。
慢性腰痛は、原因や生活背景は人それぞれです。
そのため当院では「腰痛」という病名だけを見るのではなく、その方のお身体全体の状態や生活背景も含めて施術を組み立て、無理のない改善を目指していきます。
ご自身でできること(セルフケア)
施術とセルフケアを組み合わせることは、痛みの悪循環を断ち切る助けになります。
姿勢を正す
姿勢は腰痛の原因にも結果にもなります。負担の少ない姿勢を少しずつ身につけることは、腰痛の悪循環を断ち切るきっかけの一つになります。
腰への負担を減らすためには、日頃の姿勢を意識することも大切です。
正しい姿勢とは、身体への負担が少なく、腰痛が起こりにくい姿勢です。横から見たとき、
耳―肩先―股関節―膝―くるぶし
がほぼ一直線に並ぶ姿勢が、身体への負担が少ないとされています。座っている時には 耳―肩先―股関節 が一直線になることを意識してみましょう。
いつも猫背や反り腰の姿勢に慣れている方にとっては、この姿勢をとるとびっくりするほど大袈裟に伸びている姿勢と感じる方もいらっしゃるようです。しかし、この姿勢をとった途端、それまで感じていた腰の痛みや首の痛みが軽くなると感じられる方も少なくありません。
意識してみると良いポイントは
- 頭のてっぺんから糸が出ていて、空から吊られているイメージ
- 無理に胸を張りすぎない
- 横から見て一直線を自分で鏡で確認するのは難しいから、誰かに一緒にみてもらう
- 座っている時には、骨盤を立てるようにすると、そこから上が楽に整えられます
骨盤と腹筋
反り腰や丸まった背中の姿勢が続くと、腰の筋肉への負担がかかります。そのような姿勢には骨盤の角度や腹筋が関わっています。
腹筋は、お腹を固めるためではなく、姿勢を安定させるために働いています。
腹筋がうまく使えないと、腰の筋肉が必要以上に頑張ることになり、負担が大きくなります。
セルフケアに腹筋体操を組み込んでみるのも一つの案です。腰痛が厳しい状態での無理な腹筋運動は、腰痛悪化につながる場合があります。腰痛が今まさにある方は、仰向けで「ドローイン」が、負担が少なく行えます。
ストレッチ・運動
ストレッチは、緊張をほぐして血流改善するためにもおすすめです。
気持ちいい、楽になるなあ、など心地よいと感じながら身体を動かすことは、慢性腰痛の改善にも良い影響を与えると考えられています。
ただし、症状によって向いている運動は異なります。
デスクワークで腰が丸くなりやすい方と、立ち仕事が多く反り腰になりやすい方では、適した運動も変わります。
当院ではその方に合った運動や生活上の工夫も必要に応じてお伝えしています。
セルフケアは大切ですが、痛みが長く続いている時は一人で頑張りすぎないでください。
セルフケアだけでは難しいこともあります
強い痛みやしびれ、熱があるなどの症状がある場合には、まず病院へ受診してください。
そこまでではなくても、不快な痛みが長く続いている場合は、一人で抱え込まず専門家の力を借りることも大切です。

慢性腰痛 よくあるご質問
慢性腰痛は治りますか?
慢性腰痛は多くの場合、長い時間をかけて現在の状態になっています。そのため、一度の施術や一つの方法だけで改善することは少なく、少しずつ身体の状態を整えていくことが大切です。
痛みが和らいでいくことを実感し、不安や恐怖にとらわれず、安心して身体を動かせるようになることで、回復へ近づいていきます。
「治る」の意味は人それぞれです。痛みがまったくなくなる方もいれば、多少の痛みがありながらも、ご自身にあったケアの方法(例えば適した運動や生活週間、必要に応じたお薬や定期的なケア、など)を身につけ、うまく付き合いながら趣味や仕事を楽しめるようになる方もいます。
慢性腰痛は病院へ行くべきですか?
はい、まずは重い病気が隠れていないか確認することが大切です。
夜間に強い痛みで眠れない、発熱がある、足に力が入りにくい、排尿・排便の異常がある、広い範囲のしびれがある、転倒や事故のあとに痛みが出た場合などは、早めに医療機関を受診してください。
一方で、検査を受けても大きな異常が見つからない慢性腰痛は少なくありません。そのような場合は、お薬や運動療法、鍼灸などを組み合わせながら、少しずつ身体の状態を整えていくことが勧められています。
慢性腰痛は運動してもいいですか?
はい、慢性腰痛では、適度に身体を動かすことは回復につながると考えられています。
ただし、痛みが強く、運動すること自体がつらい時に無理をすると、かえって痛みが強くなってしまうこともあります。
そのような場合は、まず専門家の手を借りて身体を動かしやすい状態をつくり、無理のない範囲から少しずつ運動を始めることをおすすめします。ご自身の状態に合った運動を選ぶことが大切です。
慢性腰痛はメンタルが原因ですか?
メンタルだけが原因で慢性腰痛になるわけではありません。
慢性腰痛には、筋肉や関節の状態だけではなく、神経系の変化や生活習慣、ストレスや不安など、さまざまな要因が関わっています。
長く痛みに悩まされていると、「このまま治らないのではないか」と考えてしまう方は少なくありません。そうすると痛みに意識が向きやすくなり、不安も強くなります。
その結果、脳や神経が痛みに敏感になり、以前なら気にならなかった刺激まで痛く感じやすくなることがわかっています。
不安を解消したい一心でインターネット検索を繰り返し、心配になる情報ばかりに触れて、さらに不安が強くなってしまうことも少なくありません。
近年では、慢性腰痛に対して、痛みについて正しく知ること(痛みの教育)も治療の一つと考えられるようになってきています。正しい知識は不安を和らげ、回復への一歩につながります。
まずはお話をお聞かせください
腰痛の原因や経過は一人ひとり異なります。
初回はお話をていねいにお話を伺い、お身体全体の状態をみながら、その方に合った施術をご提案しています。
長く腰痛が続いている方や、何をすればよいかわからずお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。